ギターの半音下げチューニング(Half Step Down Tuning)について、
初心者の方は「どうやってやるの?」と感じるかもしれません。
ギターの音作りにおいて、変則チューニングは非常に重要な役割を果たします。
標準のレギュラーチューニングに加え、半音下げチューニングやその他の変則チューニングを使いこなすことで、音楽の表現力が大きく広がります。
本記事では、「半音下げチューニング」の詳細な方法と、そのメリット、注意点に加え、
さまざまな変則チューニングの種類とその特長を深掘りしていきます。
音楽のジャンルや演奏スタイルに合わせて、どのチューニングが最適かを知り、演奏に活かせるようになるためのガイドとしてご活用ください。
半音下げチューニングとは?
半音下げチューニングは、ギターの全弦をレギュラーチューニングよりも半音だけ下げる方法です。
例えば、6弦のEがE♭に、5弦のAがA♭になるように調整します。
具体的には、以下のように各弦を調整します:
- 6弦(E) → E♭(D♯)
- 5弦(A) → A♭(G♯)
- 4弦(D) → D♭(C♯)
- 3弦(G) → G♭(F♯)
- 2弦(B) → B♭(A♯)
- 1弦(E) → E♭(D♯)
このチューニングにより、音楽の雰囲気が変わり、特にロックやメタルのジャンルでよく使われます。
半音下げチューニングのメリット
半音下げチューニング(Half Step Down Tuning)は、ギタリストにとって非常に便利なチューニング方法です。
以下では、このチューニングがもたらす主なメリットを詳しく解説します。
音楽の雰囲気を変える
半音下げチューニングは、音楽の雰囲気を大きく変える効果があります。
通常のレギュラーチューニングと比べて、
音が少し落ち着いた、もしくは深みのある響きになります。
これにより、曲によりダークで重厚感のある印象を加えることができ、
特にロックやメタルなどのジャンルでよく使用されます。
例えば、エリック・クラプトンやニルヴァーナのようなアーティストたちは、このチューニングを用いて、より感情的で力強い音楽を作り出しています。
歌のキーに合わせやすい
半音下げチューニングは、ボーカルのキーに合わせやすいというメリットもあります。
バンドの他のメンバーや歌手が異なるキーで歌う必要がある場合、このチューニングを使用することで、
全体の音楽がより自然に合わせやすくなります。
例えば、レギュラーチューニングで演奏すると音が高すぎて歌いづらい場合、
半音下げにすることで、歌がしやすくなることがあります。
テクニカルなプレイがしやすくなる
半音下げチューニングでは、特定のフレーズやリフを演奏する際に、
指の位置がレギュラーチューニングと比べて少し楽になります。
例えば、バンドがレギュラーの音を基にした曲を演奏している場合でも、
半音下げチューニングを使用すると、ストレッチが少なくて済むことがあります。
このため、速いフレーズや複雑なリフが弾きやすくなるというメリットがあります。
コードの響きが変わる
半音下げチューニングでは、コードの響きが少し異なります。
例えば、レギュラー・チューニングでの「Cメジャーコード」が半音下げることで「Bメジャーコード」に近い響きになります。
この響きの違いは、特にアコースティック・ギターやクリーン・サウンドでの演奏において顕著です。
メロディーやコードのニュアンスを変えることで、より豊かな表現が可能になります。
弦のテンションが軽減される
半音下げチューニングを使用することで、弦のテンションが軽くなります。
これにより、弦を押さえる際の負担が減少し、長時間のプレイでも疲れにくくなります。
特に、ギターの弦が非常に硬いと感じるプレイヤーには、半音下げチューニングが楽になる場合があります。
弦が緩くなることで、指の疲れや痛みを軽減することができるのです。
音程の安定性
半音下げチューニングでは、弦がレギュラー・チューニングよりも少し緩むため、
音程が安定しやすくなることもあります。
特に、新しい弦を使用する場合や、弦がまだ馴染んでいない場合、半音下げにすることで音程の変化が少なくなります。
これにより、チューニングが安定しやすくなり、より信頼性の高い演奏が可能になります。
半音下げチューニングのやり方
半音下げチューニングは、ギターの各弦の音程を半音低くすることで、
演奏に新しい表現を加えることができる方法です。
ここでは、チューナーを使用する方法、クロマチックチューナーの使い方、レギュラーチューニング専用チューナーの利用方法、ピッチシフターの使用方法について詳しく説明します。
チューナーを使用する方法
チューナーの設定
半音下げチューニングを行うためには、まずチューナーの設定を正しく行う必要があります。
チューナーの種類によって設定方法が異なるため、以下の手順を参考にしてください。
- 設定モードにアクセス: チューナーのメニューや設定ボタンを使って、設定モードに入ります。ここではチューナーの表示や機能を調整できます。
- 半音下げ設定の選択: 設定メニューで「♭」(フラット)アイコンを見つけます。
このアイコンを選ぶと、チューナーが半音下げの設定に切り替わります。
通常、ボタンを押すごとに♭の数が増えていくので、1回押すことで半音下げの設定が適用されます。 - 設定の確認: 設定後、チューナーのディスプレイに「♭」が表示されていることを確認します。
これでチューナーが半音下げモードになっているはずです。
チューニング
設定が完了したら、通常のチューニングと同様の手順で各弦を調整します。
各弦の音を以下のように調整します。
- 6弦: 通常は「E」、半音下げで「E♭」
- 5弦: 通常は「A」、半音下げで「A♭」
- 4弦: 通常は「D」、半音下げで「D♭」
- 3弦: 通常は「G」、半音下げで「G♭」
- 2弦: 通常は「B」、半音下げで「B♭」
- 1弦: 通常は「E」、半音下げで「E♭」
クロマチックチューナーの使用
クロマチックチューナー
クロマチックチューナーは、すべての半音をカバーするため、
半音下げチューニングに非常に適しています。
クロマチックチューナーを使用することで、より精密にチューニングを行うことができます。
手順
- チューナーの準備: クロマチックチューナーを起動し、チューニングモードがクロマチックに設定されていることを確認します。
- 弦のチューニング: 各弦を以下の音程に合わせて調整します。
- 6弦: 「E♭」
- 5弦: 「A♭」
- 4弦: 「D♭」
- 3弦: 「G♭」
- 2弦: 「B♭」
- 1弦: 「E♭」
- 精密な調整: クロマチックチューナーは細かい音程の違いも表示するため、各弦が正確な半音下げの音程になるまで調整します。
レギュラーチューニング専用チューナーの使用
レギュラーチューニング専用のチューナーを使用して半音下げチューニングを行う方法もあります。
専用のチューナーでは、以下の方法で調整を行います。
1フレットの利用
- 6弦の1フレット: 1フレットを押さえたときに「E」の音が鳴るように調整します。これが半音下げで「E♭」になることを確認します。
- 5弦の1フレット: 1フレットを押さえたときに「A」の音が鳴るように調整します。これが半音下げで「A♭」になることを確認します。
- 4弦の1フレット: 1フレットを押さえたときに「D」の音が鳴るように調整します。これが半音下げで「D♭」になることを確認します。
- 3弦の1フレット: 1フレットを押さえたときに「G」の音が鳴るように調整します。これが半音下げで「G♭」になることを確認します。
- 2弦の1フレット: 1フレットを押さえたときに「B」の音が鳴るように調整します。これが半音下げで「B♭」になることを確認します。
- 1弦の1フレット: 1フレットを押さえたときに「E」の音が鳴るように調整します。これが半音下げで「E♭」になることを確認します。
ピッチシフターを使う方法
ピッチシフターは、音程を自由に変更できるエフェクターで、
半音下げチューニングを簡単に実現できます。
音質に影響を与える可能性がありますが、手軽にチューニングを変更できる利点があります。
ピッチシフターの利用
- ピッチシフターの設定: エフェクターの設定を「半音下げ」に調整します。
これにより、ギターの音程が自動的に半音下がります。 - 音質の確認: ピッチシフターを使用すると音質が変わることがあるため、音色が気になる場合は、エフェクトをオフにしてペグで調整する方法を併用することを検討します。
半音下げチューニングのやり方にはいくつかの方法があり、
それぞれの方法には特有の利点があります。
チューナーを使用する方法では、設定や手順に注意しながら正確なチューニングを行い、クロマチックチューナーでは精密な調整が可能です。
レギュラーチューニング専用チューナーでも、1フレットを利用した調整が有効です。
ピッチシフターは音質に影響を与える可能性がありますが、便利な選択肢となります。
それぞれの方法を使い分けて、自分に最適なチューニングを見つけてください。
半音下げチューニングの注意点
半音下げチューニングを行う際には、いくつかの注意点があります。
これらを理解し、適切に対処することで、よりスムーズにチューニングを行い、
演奏時のトラブルを避けることができます。
以下に、異名同音とチューニングの安定性に関する注意点を詳しく解説します。
異名同音とは?
異名同音(いみょうどうおん)とは、音楽の世界で同じ音高の音が異なる名前で表現されることを指します。
例えば、「E♭」と「D♯」は音高としては同じですが、異なる名前を持っています。これは、音楽理論における調性や和声の関係から生じる現象です。
ピアノの鍵盤をイメージすると分かりやすいかもしれません。
チューナーの表示に注意
半音下げチューニングを行う際には、チューナーが異名同音をどのように表示するかに注意が必要です。以下の点に留意しましょう。
- 表示の違い: 一部のチューナーは、音名として「E♭」を表示する一方で、他のチューナーでは「D♯」として表示することがあります。
このため、チューナーの表示が異なる場合でも、音高が正しいかどうかを確認することが重要です。 - 設定の確認: チューナーの設定が異名同音に対応しているかどうかを確認しましょう。
例えば、チューナーの設定で「E♭」と「D♯」のどちらが表示されるかを確認し、必要に応じて設定を調整します。
実際のチューニングでの対処法
異名同音に関連するトラブルを避けるためには、次の点に注意します。
- 音程の確認: 実際に弦をチューニングする際には、音の高さが正確であるかを確認します。
異名同音が表示されるチューナーでも、音程の正確さを重視しましょう。 - 目安の音源: 同じ音高を基準にしている他の楽器やチューナーと比較することで、正しい音程を確認します。これにより、表示の違いによる混乱を防ぐことができます。
チューニングの安定性
チューニングの変化
半音下げチューニングでは、弦の張りが変わるため、チューニングが安定するまでに時間がかかることがあります。
以下の点に注意して、安定したチューニングを維持しましょう。
- 弦の張力: 半音下げチューニングを行うことで、弦の張力が変わります。
このため、最初はチューニングが安定しないことがあります。弦の張力が落ち着くまで、何度もチューニングを調整する必要があります。 - 弦の伸び: 新しい弦やチューニングの変更後は、弦が伸びることがあります。
これにより、初めのうちはチューニングがずれることがあります。
弦が伸びきるまでに数回チューニングを行い、安定した音程を確保することが大切です。
チューニングの維持方法
チューニングを安定させるためには、以下の方法を試してみましょう。
- 弦のプレイ: チューニング後に弦を少しプレイし、弦が安定するのを待ちます。
弦が適切に伸びることで、チューニングが安定しやすくなります。 - 定期的な確認: チューニングが安定するまで、定期的にチューニングを確認しましょう。
数時間後や次回の演奏前に再度チューニングを行うことで、音程のズレを防ぐことができます。 - チューナーの使用: 精密なチューニングを行うために、信頼性の高いチューナーを使用することも重要です。高品質なチューナーは、より正確なチューニングをサポートします。
半音下げチューニングを行う際には、異名同音とチューニングの安定性に関する注意点を理解し、
適切に対処することが重要です。
異名同音の表示に注意しながら正確な音程を確認し、チューニングの安定性を保つためには、弦の張力や伸びに対応することが求められます。
これらの注意点を意識することで、スムーズなチューニングと安定した演奏を実現しましょう。
変則チューニングの種類
ギターのチューニングには、半音下げチューニング以外にも様々な変則チューニングが存在します。
これらの変則チューニングは、特定の音楽スタイルや演奏技術に応じて、
より豊かな音色や演奏の幅を提供します。
以下に、代表的な変則チューニングの種類とその特徴を詳しく解説します。
ダウンチューニング
ダウンチューニングは、全ての弦の音程を一定の幅で下げる方法です。
通常のレギュラーチューニングに対して、弦の張りを緩めて音程を下げることで、深みのある音色を得ることができます。
ダウンチューニングの具体例
- 全弦1音下げ(Drop D): 最も一般的なダウンチューニングの一つで、全弦を1音下げてチューニングします。例えば、標準のEADGBEチューニングを、DGDGBDに変更します。これにより、重厚な音色と簡単にパワーコードが弾けるようになります。
- 全弦1音半下げ(Drop C): さらに低音を出すために、全弦を1音半下げるチューニングです。例えば、EADGBEチューニングを、CGCFADに変更します。このチューニングは、特にメタルやハードロックで使用されます。
ダウンチューニングのメリット
- 重厚感: 低い音域が強調されるため、サウンドに深みや重厚感が加わります。
- プレイのしやすさ: パワーコードやバンドルコードが簡単に演奏できるため、リフやフレーズのプレイが楽になります。
ドロップチューニング
ドロップチューニングは、特定の弦だけを下げる方法で、
通常のレギュラーチューニングから一部の弦を変えることで、特有のサウンドやプレイスタイルを実現します。
ドロップチューニングの具体例
- ドロップD: 6弦(最も太い弦)だけを1音下げてDに調整するチューニングです。これにより、D音が基準となり、他の弦はレギュラーチューニングのまま維持します。
例えば、EADGBEチューニングを、DADGBEに変更します。ドロップDは、パワーコードを押さえるのが簡単になるため、ロックやメタルで人気です。 - ドロップC: 6弦を2音下げてCにするチューニングです。全弦を1音下げたドロップDからさらに1音下げる形になります。
例えば、EADGBEチューニングを、CGCFADに変更します。このチューニングは、より重いサウンドを求めるメタルやハードコアで使われます。
ドロップチューニングのメリット
- リフの簡便性: ドロップチューニングにより、低音弦を使ったリフやパワーコードが簡単に押さえられます。
- 独特のサウンド: 特定の弦だけを下げることで、ユニークな音色や響きを得ることができます。
オープンチューニング
オープンチューニングは、全弦を調整して特定の和音を奏でるようにする方法です。
このチューニングでは、開放弦で特定のコードが鳴るように調整します。
特にブルースやカントリー、フォークで利用されることが多いです。
オープンチューニングの具体例
- オープンD: 全弦を調整して、開放弦でDコードが鳴るようにします。
具体的には、レギュラーチューニングEADGBEを、DADFADに変更します。
このチューニングは、スライドギターやドローン音を強調するのに適しています。 - オープンG: 全弦を調整して、開放弦でGコードが鳴るようにします。
例えば、レギュラーチューニングEADGBEを、DGDGBDに変更します。
オープンGは、リードプレイやブルースでよく使用され、特にスライドプレイに便利です。
オープンチューニングのメリット
- 即座に和音: 開放弦で特定の和音が鳴るため、和音の構築が簡単になります。
- スライドプレイの便利さ: スライドギターやブルース、カントリーなどのジャンルで、特に役立つチューニングです。
変則チューニングには、ダウンチューニング、ドロップチューニング、オープンチューニングといった様々な種類があります。
それぞれのチューニングは、音楽のスタイルやプレイ技術に応じて、特有の音色や演奏の利便性を提供します。
これらのチューニングを理解し、適切に使い分けることで、より豊かなギター演奏が可能になります。
オススメのクリップ式チューナー
私が何年も買い換えることなく使い続けているチューナーが、BOSSのクリップ式チューナーです。
かなり丈夫で長持ちしています。
他のクリップ式に比べ壊れにくい構造ですし、視認性もバッチリです。
シールドに繋ぐ手間もないので、面倒くさがりな私には最適なアイテムです。
もちろん上記の方法で簡単に半音下げチューニングもできます。
「どれを使えばいいかよくわからない」という方は、まずコレを試してみてはどうでしょうか。
これの一番の良いところは、首部分が折れたりする心配が一切ないということです。実用的なのです。
まとめ
半音下げチューニングは、音楽の雰囲気を変えたり、
歌のキーに合わせやすくしたり、テクニカルなプレイを楽にしたりと、多くのメリットがあります。
音の響きや演奏のしやすさにおいても大きな変化をもたらすため
、多くのギタリストがこのチューニングを積極的に利用しています。
ぜひ、試してみて、あなたの演奏にどのような影響を与えるかを体験してみてください。